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「バーンハルト隊長」
呼び止められた声に従い後ろを向く。流れるような漆黒の頭髪。ミラーシェイドが掛けられているが、その下には全てを塗り潰すような黒い瞳が聡明な光を発している。ほどよく鍛え抜かれた屈強な体は砂漠を照らす灼熱の光で日に焼けている。
「どうした、アリーナ?」
バーンハルトは自分の副官に向かって問う。
「はい。レジナス様から緊急の用があると、隊長をお呼びするよう言いつかわれました」
「わかった。アリーナは部下達に準備をさせておいてくれ」
頷き、踵を返して硬質な靴音をたてる。
と、同時に顔を顰める。脇にいたアリーナの顔も固くなる。
対峙する男の名前はマートン。階級は大佐。バーンハルトの直属の上官である。
「珍しいな、バーンハルト中佐」
嘲りと、蔑みを含んだ声。
「……お久しぶりです、マートン大佐」
「その気もない挨拶などする必要はないぞ」
見下すような態度で話す彼に、
「……ご忠告、痛み入ります」
口先だけの礼を言ってマントを打ち鳴らす。
それにマートンは冷笑を浮かべて見つめているだけだ。
マートンのどこまでも深く、暗い瞳を見て、アリーナは訳もわからず不安に苛まれた。